京葉人材育成講座カリキュラムの基本的な考え方

育成する人材像は、「科学的・論理的思考、行動のできる人材」です 。現場で知識を活かすには、「正しいものの見方・考え方」を学んで、まず頭で理解することが必要となります。

現場で技量を発揮するには、頭で理解したことを、繰り返し訓練して身体で覚え、自らの経験として積み上げることが必要です。

現場で発想できる感性は、苦い経験に基づいて、心から納得することから身につけることができます。

発揮できる現場力学び求めるもの
現場で活かせる知識頭で理解本質・根拠の理解と論理性、展開力
現場で使える技量身体で覚える教えられた技術の上に自身の経験を積上げ
現場へ活かせる
現場で発想できる感性心から納得する危険予知、異常発見には知識だけではなく、
体験・体感が必要

研修対象は、これまでの運転オペレーター・中核要員、管理者・経営トップ層に、協力会社教育を加えて、 3 つの区分とします。

研修対象者職種層
1 運転オペレーター若手、中級、班長
2 管理者層、経営トップ層主任、係長、課長、工場長
3 協力会社社員オペレーター、監督者、所長

運転オペレーター対象講座

1.現場で生かせる知識

科学的・論理的思考をするためには、 正しいもの見方・考え方を学ぶ必要があります。その考え方の本質、そして考え方が導かれる背景や実際に起きた事故やトラブルとの関連を学びます。

技術要素修得項目
1 物質安全燃焼の3要素、危険性評価方法、静電気、自己反応性物質、
反応暴走、粉塵爆発等
2 化学工学物質収支、熱収支、伝熱、蒸留、分離、反応工学等
3 安全性評価リスクアセスメント、HAZOP 、リスクマネジメント、変更管理等
4 プロセス安全本質的安全、インターロック、多重防護、安全計装等
5 設備管理設備安全設計、設備保全、維持管理、腐食、防食等

2.現場で使える技量

教えられた技術は、経験の積み重ねと、 身体で覚えることによって、現場で使える技量となります。基本は、繰り返しの訓練となります。

技術要素修得項目
1 トレーナー製造現場教育の理論と具体的方法
2 異常発見能力プラント保安と故障の早期発見
3 チーム力チームリーダーの育成、円滑なチーム運営力向上
4 問題解決能力問題や課題に気付き、その解決策を考え、実行し解決する
5 コミュニケーション正確に伝え理解する能力、信頼関係を構築する力
6 人間工学ヒューマンファクターと災害防止、4M分析、エラープルーフ

3.現場で発想できる感性

感性は自ら体験することによって、その怖さを実感でき、身につくものです。「百聞は一見に如かず」といわれるように、事故の悲惨さを知るには、現物を見ることが最も効果があります。

感性要素感性体験項目
1 安全感性向上「不安全状態」と「不安全行動」を身体で覚えて避けることができる
・墜落、転落、安全帯ぶら下がり
・挟まれ・捲込まれ
・電気災害(感電、静電気)
・ガス爆発、粉塵爆発、水蒸気爆発
2 プラント危険体験プラントにおける危険の疑似体験
・火災ガス漏れ、AR (拡張現実)
・被液、噴出、バルブ漏れ等の実体験
3 危険予知訓練「危険」を「危険」と気付く感性、集中力・問題解決能力を高める
4 ヒヤリハット・ヒヤリハット事例
・想定ヒヤリ報告制度

管理者層・トップ経営層対象講座

トップ経営層を含むライン管理者は、率先垂範して安全プログラムを策定し、具体的に実行、組織において「安全文化」を構築、発展、定着させる役割と責任があります。

1.管理者層

安全管理の基本はライン管理です。
ライン管理者が率先垂範して判断行動できるマネジメント力を身につけます。
管理者層教育の考え方として参考にしたデユポン社の考え方を引用します。
『安全管理の成功の鍵は、安全をライン管理とすることであり、経営幹部の強力かつ目に見えるコミットメント(意欲と関与) によってのみ可能となります。どのようなシステムを持っていても、いかによくシステムが機能していても、経営幹部・ライン管理者の「感じてもらえる指導力( Felt Leadership )」 が発揮されなければ、誇れるような優良安全は達成されません。 』

マネジメント要素修得項目
1 製造現場の変化に対応・人、設備の変化への対応
・ヒューマンファクター
・リスクベースの安全管理
2 リスク評価・リスクアセスメント・変更管理を機能させるための課題と対策
・リスク低減対策の考え方
3 技術・技能継承・技術・技能継承へのシステム的取り組み
・何をコア技術として継承するか
4 安全マネジメント・どこまでの安全を求めるか
・人と機械との役割
・安全配慮義務
5 安全文化・安全はライン管理が最も重要
・安全文化は、マネジメントシステムとが相俟って安全を確保

2.トップ経営層

安全面で優良企業として業界内に認知されている企業は、経営トップが主導する全社的取り組みが功を奏しています。
経営トップ層は、 自らの安全に対する考え方( Philosophy を示し、その考え方が長年にわたって継続維持されていく「安全文化」を構築していく責任があります。
併せて、これからの社会環境の変化に対応して、「自社事業の将来像」 更に「働き方の未来像」 を示すことが、事業所員全体のモチベーションアップにつながります。

トップ層要素修得項目
1 安全マネジメント経営方針と安全マネジメント
・どこまで安全を求めるか安全性と生産性とのバランス
・リスクベース安全管理
・Safety2.0 人間と機械との協調、IoT ICT技術の取り込み
2 これからの化学産業・化学産業は社会環境の変化にどのように対応していくか
・新たな技術開発
・化学プラントの将来像

協力会社教育向け講座

各企業とも,協力会社の安全管理に腐心しています。
一次請けだけではなく二次請け、三次請けの協力会社従業員の安全教育に対する要望が強く、協力会社教育には、以下の二つがあります。

  1. 各会社に共通する安全基礎教育
    (危険予知,4S ,ヒヤリハット報告活動、指差呼称、 TBM ツールボックスミーティング、職場巡視等)
  2. 個々の会社に固有の安全管理方式、プラント特有の安全管理ポイント

京葉人材育成会は、各社に共通の安全基礎教育を受け持ち、 京葉人材育成講座の安全基礎講座修了証を与えることによって、各社の入構時教育がスムーズに行えることに寄与していきます。
各社は、それぞれの事業所で作業するためのルールやプラントの特性など安全上注意すべき点を教育することによって、 効率的に作業に取り掛かれるようにします。

一方、協力会社(関係請負人)の事故に共通することは下記の通りです。

  1. 関係請負人の労働災害の発生率が、元方事業者に比して高い。
  2. 関係請負人は、危険で有害性の高い作業を分担することが多い。
  3. 関係請負人の作業場所は、元方事業者の事業場構内であり、自主的な努力のみでは十分な災害防止の実があげられない。

このような実態を受けて、「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針(製造業元方指針)」が制定されました。

製造業元方指針のポイント
「同一の作業場所において、元方事業者と請負業者が作業する場合、元方事業者が一元的に連絡調整等の統括的な安全衛生管理を行うこと」です。

  1. 化学設備の場合は、化学物質を取り扱う設備等の改造・修理等に関して、発注者が講ずべき措置として、化学設備等で取り扱う物の危険性および有害性等は文書によって情報伝達すること。
  2. 工事等で請負業者に渡す前に、当該設備内の 危険物質の除害化することなどが定められている。

協力会社要素修得項目
製造業における元方事業者による
総合的な安全衛生管理のための指針
・各会社に共通する安全基礎教育
・安全基礎講座修了証を与える

2024年度の京葉人材育成講座科目紹介についてはこちらをご覧ください。

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